令和4年2月26日、27日の2日間に渡り、精神障がい者ピアサポーター養成研修の専門研修を開催しました。
今回はコロナ感染拡大のため、オンラインでの開催となりました。
11月に行われた参集での基礎研修が熱く盛り上がっただけに、オンライン開催でその熱を再燃できるだろうかとの不安もありましたが、いざ始まってみると続々Zoomに入室されてきた参加者の皆さんがそれぞれに挨拶を交わし、楽しそうに会話が弾んでいるところをみてすぐにそんな心配はどこかへ吹き飛んでいきました。
そんな温かい雰囲気の中で幕を開けた専門研修1日目は、リカバリーについての講義から始まりました。発病のきっかけから様々な体験を経てリカバリーに向かっていく自分のリカバリーストーリーを振り返り、グループ演習で発表しました。ピアサポーターの強みは何より自分自身の体験そのものです。自分にとって一度きりの人生に失敗があったっていいし、悩みがあっても良い。障がいがあってもなくても自分らしく生きてきた人生を伝えることが時に相手の希望や原動力となりうることを学びました。またリカバリーの過程にゴールや正解はなく、その人自身が様々な目標や思いを抱きながら今も一歩ずつ歩んでおられるということを感じました。
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次の講義では、ピアサポーターの専門性を活かすために重要な視点であるストレングス・エンパワメントについて学びました。演習では事例をもとに、ストレングスを考えていきました。ストレングスとは、性格や能力、環境面、その人の願望など様々であり、そこに着目しながら自分自身のリカバリーの経験も踏まえて意図的に伝えていくこともピアサポーターの専門性として必要であることを学びました。
1日目最後の講義では、当事者の方は精神保健福祉サービスの仕組みについて、事業所の方はピアサポートを活かすスキルと仕組みについてそれぞれ講義を受け演習を行いました。当事者の方はピアサポーターとして実際に活躍したい場について話し合い、事業所の方は、ピアサポーターが働きやすい場を整えることや橋渡しとしての役割があることを学び、共有しました。
1日目の研修を終え、それぞれがこれまでの人生を振り返り、自分とも向き合う濃厚な1日となりました。辛い経験などを思い出すことも多くあったと思いますが、みなさんがこれまでの体験や自身の思いをしっかり言語化しておられるのが印象的でした。そして、これまでの体験を活かしてこれからに向けて活動していきたいことを考えておられ、多くの希望や思いを共有できた1日目でした。
2日目は、社会福祉法人じりつの岩上洋一氏、特定非営利法人あすなろの彼谷哲志氏のお二人を講師として招きに講義と演習を進めていただき学びました。
2日最初の講義ではピアと事業所それぞれ分かれて講義と演習を実施しました。ピアの講義「支援者として働くこと」では、労働者の権利と義務を基本として働く準備や心構えについての講義の後、「自分ならどのような労働環境で働きたいか」について演習で深めました。
事業所の講義「ピアサポートを活かす雇用」では、事業所の受講者を対象にピアサポーターが活躍しやすい場や自分達の事業所ではどのような準備をしていくと良いのか、ピアサポーターと専門職との協働について学びました。
続いて、「セルフマネジメント・バウンダリー」の講義では、ピアサポーターが葛藤しやすい状況、役割葛藤や二重関係など具体例を交えながら学びました。人間関係で困ったことを個人ワークしながら、バウンダリーを意識すると気持ちが変化するのか、などを演習で意見を出し合いながら検討しました。
そして最後の講義「ピアサポーターがチームにいること」ではチームワークの理解をした上でチームにおけるピアサポーターが留意する点や役割について学びました。
2日目の講義ではより専門的な内容となり、ピアサポーターとして働くためのスキルや事業所として雇用するために必要な内容やお互いが協働して働くためのチームワークなどより深く学びました。また、それぞれの講義や演習で、鳥取で実際にピアサポーターとして雇用されている森定さんや二宮さんの経験談を講師の先生との掛け合いで紹介され、より具体的にピアサポーターとして働いていくためのスキルや雇用していくために必要なことや配慮点について学び、その上でそれぞれの受講者の考えるピアサポーターとしての活動や協働について深めていく内容となったと思います。
受講者の方の感想では、「1度対面で会っているメンバーと再会できたことでZoomでも大きな緊張がなく研修ができた。」「ピアサポーターとしての関わっていき方がまだ不透明で正直不安な気持ちがあったのですが、「今のままでいいんだよ」と言ってもらってホッとした。過去の自分に誇れるような活動が出来たらよいなと思っています。」「なかなか自分以外のリカバリーストーリーを聴く事はなく、人の深いところまで聴けて心に響きました」等の感想をいただきました。
4日間の養成研修が終わり、ピアと事業所が同じ場での学びを通して得られたことは沢山あったと思います。立場の違いを超えて、お互いを尊重し合い、協働していくという体験ができたことがとても大きな収穫でした。
修了者皆様の今後の活躍を期待しつつ、ピアサポーターが活躍できる環境作りやその先のより良い社会つくりを皆様と一緒に取り組んでいきたいと思います。
最後に受講者の皆様、研修開催に協力していただいた関係者の皆様に感謝申し上げます。